2019.02.15

「+ 住宅用消火器」ができるまで(後編)

「汚さないよう、細心の注意を払いながら作業する」

塗装後は、薬剤を充填したり、レバーハンドルを組み立てたりという工程があり、手で行う作業が多くなります。常に汚れに気を遣う必要があるため、スタッフは使い捨ての手袋を使用。また、作業中に商品をまとめて保管する際は、一つひとつの間にボール紙を挟んで傷がつかないようにと、手間をかけています。

「マットな白は汚れやすいし、マットな黒は少し触るとツヤが出てしまうというデリケートな商品です。消火器を作るという通常の作業に加えて、汚さないという基準も加わるとなると、慣れるまでが大変で。スタッフも、消火器を作っているという感覚が変わったかもしれないですね。一番美しい状態でお客様に届くよう、細心の注意を払ってチェックを行っています」

(製造課製造グループ係長の山田 俊さん)

ブランドタグをつけたり、拭きあげたりという仕上げの作業は、すべて手作業。使用方法や注意事項等を説明する文言やイラストの表示、いわゆる記銘板のシールを貼る位置も、今回のプロダクトでは背面と決まっているので、慎重な作業が必要となります。機械で行うと傷がつくのも怖いため、熟練したベテラン職人の手作業が頼り。

完成度が高い、インテリアになじむ美しいデザインの消火器が生まれた背景には、ひと言では表せない苦労の数々があったのです。


商品の塗装を汚さないよう、スタッフは全員使い捨てのビニール手袋を使用している。

ようやく完成した消火器は、段ボール箱で梱包して商品となります。ギフトとしても喜ばれそうなシンプルで美しいデザインの箱は、「+maffs」のために特別に仕立てたもの。

ここにも、新しい工夫が必要でした。

「既存の同じサイズの消火器の箱をそのまま利用すると、箱と商品がこすれて汚れたり傷がついたりしてしまうんです。ビニールに入れてから梱包する手もありますが、手間がかかりすぎる。いろいろと試行錯誤してようやく、箱の中で動かないよう、効率よく支えられる梱包を実現できました」(技術部機器技術課課長代理の伝野 輔さん)


消火器を箱の中で固定するために、最小限のパーツで梱包できるような設計を考えた。

また、塗料や箱だけでなく、タグやそのゴム、シールなども、従来の消火器では使わなかった素材。仕入先と工場、デザインチームとの協力なしには成し得ませんでした。

「商品の最終的な仕様が決まってから、発注をかけなければなりません。初めて使う素材が多く、素材探しから仕入れまでの諸調整も非常に難航しました。でも、素材が揃わないと作れないので、もう必死です。仕入先の企業を拝み倒して協力してもらい、なんとかこぎつけたという感じです」

(購買課購買グループ係長の髙垣 美由紀さん・購買課課長の窪田 卓郎さん)

「新しい仕事はやりがいがある」

実は、発売時期が先に決まっていたため、製作スケジュールはとてもタイトなものでした。タイムリミットが迫るなかで難しい作業をこなしていくというのは、想像するだけでも大変。さらに、業務用の消火器製造の繁忙期である12月に製造に取り掛かったため、「この忙しいときに、大変なことを」という気持ちがあったのは当然のこと。

それでも工場のスタッフは口々に「新しいことにチャレンジするのは面白い」と言います。そこに感じられるのは、プロとしての気概。

「消火器製造は安定した業界ですが、これからの世の中、販路を広げていかないといけないとは思っていた。いい機会だったと思う」

「手がかかった分、可愛い子だなと実感しています(笑)」

「キッチンの隅で忘れられないだろう美しいデザインで、友人にも勧めたい」

「見た目が違うだけでなく、防災が身近になる商品だというコンセプトに共感しました」

「市場の評価が気になりますね。ここまで手間をかけていいんだな、と思いたい」

「居住空間の中にしっくりなじむものを作りたいと思った」

そう話してくれた工場チームの面々。

それぞれがプロの仕事を全うし、企画チームと工場が一丸となって進んだからこそ、新しいコンセプトの「+ 住宅用消火器」が完成しました。


今回のプロジェクトをメインで担当した工場チームの面々

(島田 俊一さん、伝野 輔さん、髙垣 美由紀さん、小松 健一さん、関本 力さん、山田 俊さん、元木 則之さん、小林 篤司さん、岩田 清さん、中村 幸治さん、林 達也さん、窪田 卓郎さん)

+maffs 「+ 住宅用消火器」開発ストーリー

#01 新防災ブランド「+maffs」に込めた思い
#02 防災をデザインする
#03 「+ 住宅用消火器」ができるまで(前編)
#04 「+ 住宅用消火器」ができるまで(後編)